信用リスクを含まないという条件の下で、リスク許容度の大きな投資主体が要求するだけの高い期待リターンを生み出すものとして、「消去法的に」原油などの商品相場が選択されていると見ることが可能であろう。
もし、世界中の投資家が信用リスクを嫌っている反動で、原油などの商品市況高騰が発生しているとすれば、極めて厄介な問題である。
商品市況高騰は、「ドルの津波」を反映したドル安傾向とあいまって、米国経済をインフレの危機にさらすことになる。
しかし、景気後退が懸念され、かつ金融不安が解消しないままに、インフレが顕在化すれば、米国はFRBによる金融緩和という危機対応手段を発動する余地がなくなることになる。
景気の悪化や金融不安に対する政策対応余地がなくなったと見れば、世界中の投資家が米国資産を見限る動きが現れてくる恐れがある。
サブプライム金融危機は、米国経済の決定的な凋落、さらには米ドル基軸通貨体制の終馬にまで繋がりうる危険性を学んでいる。
信用バブルの生成と崩壊の本質を解き明かすことがここを織りなす「横糸」であるとすれば、ここには、別の軸を持つ「縦糸」が存在する。
米国の経済政策史である。
サブプライム危機が米国経済の凋落にも繋がりかねない一大事ならば、それと同時に政治的な転換も必然的に訪れるだろう。
この点で、経済政策の歴史を紐解くのは有益でもあり必要なことだろう。
サブプライム問題に関する多くの評論が、2000年代、早くても1990年代を出発点とするのに対し、ここは、1960年代からその記述をスタートする。
1960年代にケネディ大統領が採用した「リベラリズム」、つまり「大きな政府」を指向し、市場への政府の介入を特徴とするケインズ主義的な経済政策は、1970年代にN大統領の下で採用された統制色の強い経済政策への布石となる。
しかし、1970年代後半にかけ、リベラルな経済政策の弊害は、米国産業の国際競争力の低下やインフレの形で米国経済を襲う。
一方、1980年代に入ると、レーガン大統領の下での、いわゆるレーガノミクスの登場とともに、米国の経済政策は大きく方向転換する。
「シカゴ学派」「マネタリスト」と称される、新古典派経済学に依拠した自由主義・保守主義的経済政策路線への転換である。
米国政治を論ずる際、「リベラル」ないしは「リベラリズム」という用語は、多元的な意味を持つので注意が必要である。
一般に、米国政治学の世界では、自由な経済活動を尊重し政府の介入を排除する自由主義的な政策のあり方を伝統的に「リベラリズム」と呼ぶ傾向もあるようだ。
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